Arsenal Zavod Kiev 60

《超ジャンク改造機》

 のっけから超ジャンクというのにはわけがある。



 ツイッターで知り合った黒田さんがファインダーなどがないジャンク だが、シャッターは動いているので欲しければと書かれていた。それで手を上げてみた。シャッターを直す自信はないが、 その他の問題なら対応できるだろうと踏んだのだ。ただし、レンズは自力で用意せねばならないので、同時平行で探し、 外観が悪いがレンズはそこそこのミール26(45of3.5)を準備した。



 66の画面だから、上から見て写すのは二眼レフで慣れている。使えるペンタプリズムを探すのは至難なので、このまま ウエストレベルで使うと方針を立てた。



 さて、第一の問題は「軍艦部カバーをするとシャッターセットが出来ない」である。軍艦部を乗せるとどこか干渉する のだろうと考えた。





 先ずはここを疑った。この部分は実際の巻上げピンを駆動する部分だが、わざと余裕を持たせて巻上げ準備角にする部分だ。

 確かにこの状態だとセットできる。ところが軍艦部を被せると、巻上げレバーがストッパーに当たってセットできない。観察 すると印の部分が変形している。上手く巻けないので、ロシア人が怪力で変形させたのだろうか。

 このカメラは分割巻上げどころか、巻上げ途中で力を緩めると元に戻ってしまうのでフイルムが 余分に送られるだけになってしまう。対策として隙間をごく少なくしてみた。





 これでもまだ完全な動きにならない。結局、ストッパーを外して巻上げ角度が十分になるようにしたら正常動作になった。 開いた穴は裏からガラスを貼った。



 次はここ(シャッター速度変更部)の変形。叩いて目立たない程度に復旧した。



 これがシャッター速度リングの基部。見たこともないスローガバナーに続く。180度反対に組めてしまうので、合いマーク をつけた。(リングを外さないでも組めるが、合わせるのが面倒なので外した)



 アイレベルファインダーはブロニカEC用を採用。接着固定し、中から遮光紙で補強した。ワンタッチで開閉できるから 使いやすい。ただし、本来より高くなったのでルーペの視度が合わない。これは交換の必要あり。



 これで機能回復と思ってテストフイルムを通したら、カウンターが用を為さない。矢印部が枚数に応じて巻上げ量を コントロールするカムだが、これはカウンターに連動している。カウンターが効かないと巻上げが大幅にずれる。

 ここを分解したらカウンターのラチェットが効いていないので直した。ところが今度は裏ブタを開けると戻すはずなのに カウンターが戻らない。裏ブタで押されてカウンターの戻りを止める部分が押された状態のまま固定されている。裏ブタを 開けてもカウンターが戻らない。しかもどうも部品の配置がおかしい。全く他の部品と接触しない部分が 複数ある・・・・・



 元々ずれるので有名なカメラなので、ここでスタートマーク合わせ式セミオートマットをあきらめた。カウンターは 数枚進んだところに止め、空送りを利用して手動アジャストで赤窓式で使おうと決意。フイルム押さえ板に穴を開けた。





 裏ブタにも穴を開け、赤窓を造った。





 やっと使える状態になったので皮を貼り、アイレット用のアダプターを製作。アイレットの頭の直径はおよそ6.1o、細い 部分は3o程度である。ほぼこのサイズでだるま型に穴を開ければ大きい方で通し、小さい方で外れ止めになる。1.2o程度の ステンレスかアルミ素材が必要だ。アルミの方が当然加工が楽だが、強度はステンレスが上。私は楽な方を選んだ。 そこまで強度は必要ないだろうから。しかし厚すぎたのでステンレスに戻った(笑)



 レンズは特に問題なさそうだったが、一応分解して清掃した。前玉に一箇所突き傷があるのでこれは墨を入れて処理 した。売る気は無いから外観は気にしない。実際には良く見ないとわからないが。



 貼り付けのネームプレートが消えていた。皮に型押ししようかと思ったら、黒田さんがついでにロシアから仕入れて くれるとのことなので、それまでの間は洒落でいこうとこうしてみた。(持ち歩いたときに違和感なしと言われた)



 ミール26は非常に逆光に弱いとのことなので、フードを探そうかと思ったが、35o換算24o用の82oフードなど 市販にあるはずも無い。そこで、手全から考えていた方法を実行してみた。



 ファインダーで確認しながらどこまで切れるか考え、光路ぎりぎりに抜いてレンズ前に置く、つまりシェードではなく レンズ内の遮光パーツを前に入れて乱入光を切るという考え方だ。広げる必要が無いようにフィルター枠内に おさまる構造を考えた。





 最終形態。テスト撮影で四隅にケラレが出たので、そこを丸く切り込み、黒く塗った。テストでは画角ぎりぎりの外に 強い光源があってもゴーストやコントラスト低下が避けられるようになった。有効だと思う。





 ファインダーは問題ないが、ルーペは画面から遠くなり、視度が全く合わない。窮余の一策でマイナスにして合わせた。 左がオリジナルで、その上に右のマイナスを入れたが強すぎるので真ん中の弱いプラスでフォローして見た。これで きちんと見える。三枚玉ルーペ(笑)。ただしきちんと収納できないがまあ良いか。



 一先ずの完成形。

《試写》

 フイルムはアクロスにて







 絞った遠景から開放の室内まできっちり写る。35o換算24oとしては周辺落ちが少なく、しっかり描写している。 なお、四隅の落ちは逆光対策で入れた遮光板のケラレで、既に対策済み。

 以下はこのレンズの逆光描写見本



 左の太陽を入れた物のでは全体に薄くフレアーになるが、許容できるレベルで、右は画面ぎりぎりの外に太陽を置いて みたが、影響は見られなかった。遮光板は有効だ。レンズ名などを見せたいのでなければ使えると思う。

☆このカメラでもソ連のカメラらしさが味わえた。外観はいかついものだ。ソ連モノはドイツカメラからそっくりデザインを 頂いたものが見られるが、中はしっかりオリジナリティーを持って造られている。不運なのは安物、際物と見られがちなこと。 よって単価が低く、ちゃんとメンテンスすると実勢価格を上回りかねないのでまともに整備されたものが少ない。

 国が荒れたソ連からロシアに変わる時代のものは確かにひどいものが見られるが、ソ連時代のものはきちんと作られている。 なんでそんな機能を取り入れたのかという物もあるが、総じて内部の作りは悪くない。自力で整備できるなら立派な道具だ。 Kiev60はシリーズのレンズが豊富にあり、それぞれなかなか良いレンズである。きちんと整備すれば、立派に実用に耐える カメラたちだ。


面白いです、ありがとうございました>黒田さん

November 2013

トップに戻る